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キャプテン翼二次創作ファンサイト CAPTAIN TSUBASA FANFIC WEBSITE
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「非科学的だね」
 三杉は窓の外をちらりと見やってわずかに眉を寄せた。
「気象の変化というものは大気の状態や気圧の動きで左右される。晴れろとか雨になれというような願望で動くものじゃない」
 つけっぱなしのTVからバラエティタレントたちの騒ぐ声がきゃあきゃあとやかましい。これでも気象情報のコーナーらしい。
 岬もそれを聞きながら不愉快そうな表情を見せる。非常に珍しいことに、この件に関しては三杉と意見の一致があったようだ。
「明日の祝勝の式典、天気なんか大荒れで中止にしたっていいんだよ。現地でもう祝ってきたんだし、二度手間」
「まあ、スポンサーの関係とか、僕らとは離れたところでしがらみが何かとあるからねえ」
 こうなると苦笑に近くなる。
 と、窓の外、覚えのある声がはじけた。
「みさきくーん! みすぎくーん! 雨やみそうだから出といでよー!」
 あんなに曇っていた二人の表情がぱっと明るくなる。二人は2階から大きく窓を開いた。
「聞いた? 明日のパーティ、ホテルに行く前に練習グラウンドで俺たちのエキシビションがあるんだって、急遽」
 なんだその余計なお世話は…という思いがちょっと出かけるが、大喜びして声を弾ませている翼を前にすれば一瞬で消滅する。
「晴れたら、なんだって。俺たち雨なんて気にしないのにねー」
 妃殿下を雨の中立たせるわけにいかないからだろう。ならしかたないか。
 そのお方なら雨だろうと喜んで参加しかねないが、本人の希望はともかく周囲が青くなるのは間違いない。
「だからさ、てるてる坊主作って架けようよ」
 エントランスの軒下でもう作りかけているそれは? 二人はともかくも階下に急いだ。
 鼻歌など歌いながらペンを握っている翼は、なんだかふらふら揺れていないだろうか。歌に合わせて。
 その横から覗き込んでいる男がぷっと噴き出した。
「おいおい、今から酒をかけてどうする。願いが叶ったら、だろうが。それにおまえ、おまえが飲んじゃダメだろ」
 隣で笑っていた若林がこちらに気づいてさっと翼を担ぎ上げた。
「あー、こんなに酔っちまって。介抱しなきゃな。どれどれ俺が」
 棒読みでつぶやきながら、てるてる坊主の残骸もそのままに若林は駆け出す。岬がとびかかろうとする手をすり抜けて。
「ん、もうっ! なにすんの、若林くん!」
 あっという間に建物の陰に消えてしまう。翼のケタケタという笑い声と共に。
 三杉はそれを見送ってため息をついた。
 おそらくすぐに確保されるだろうが。南葛組の保護者達か、容赦のない脚力の誰かに蹴り飛ばされて。
 優勝記念の祝勝会。さて明日の天気は。




end








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