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キャプテン翼二次創作ファンサイト CAPTAIN TSUBASA FANFIC WEBSITE
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 シュナイダーの目には勝利の文字しか映っていなかった。
 緑のピッチ。その先には。
「必ず勝利する。ワカバヤシ抜きの日本など!」
 その若林はベンチにいる。代わりに、ゴールの前に立つのは森崎だ。
「粉砕する! 俺のファイヤーショットで!」
 そして駆ける。どんなタックルもはねのけて、まっしぐらに。
 それを、森崎は見据えていた。照準が、定められるのがわかる。
「来る!」
 形のない渦巻くエネルギーがその前に迫る。
「…来るぞ」
 空間が絞られてゆく。その見えない一点へ。
 森崎はそれを全身に受けて、一人立っていた。
「代表入りしてからの俺は、ずっと絶望しかなかった。打ちのめされて、先にも何もなく」
 感覚は襲い来る圧迫感に集約されていく。ここがどこなのかさえ、判らないほどに。
「チームでも、若林さんや若島津との力の差を見せつけられるばかり。同じ代表にいながら、何もできずに、追いつきたくても追いつけない、そんな日々だった。プレマッチでは、エース2人が下がったチームなのに、なすすべもなくやられて、力のなさをいやというほど実感した。けど、その経験があったからこそ、今、俺はここにいる。誰かと比べたり追いやられたりすることのない場所に俺はいるんだ、たった一人で、俺の力だけを頼りに」
 スタジアムの大歓声がいつの間にか消える。何もそこにない。ギリリと迫る、大きな、圧倒的な意志のほかには。
「若林さん、若島津、ジノ、丹生――そして俺をここに来させてくれたみんな。勇気の足りない俺に、闘志を与えてくれたドイツ。その全部に恩を返す、ために…」
 照準がこちらに向く。そのパワーが。
「ディフェンスの配置を見てシュートコースを見定める。空いているコースはどこだ! 一番危険な瞬間はどれだ! それに合わせて備えれば、一瞬早く動ける。そうして――」
「ファイヤー!!」
「俺は、俺という存在を、信じる――!」
 衝撃が全身に広がった。強い、重い圧力を、両足を踏みしめて耐える。腕の中の燃えるような熱さ。――それが、止まった。
 聞こえなくなっていた歓声がその一瞬に爆発した。
 何が、起きたのか。
 呆然とする。同じく言葉を失って立ち尽くしているシュナイダーが正面に目に入った。
 胸元に、ボールがあることに今気づく。
 視線は横に動いて、スタンドの沸き立つ動きをとらえる。若林、若島津、ベンチの選手たちの叫ぶ口の動きが目に入って、やっと実感が戻った。ゆっくりと、じわじわと。
「と、れたのか? 俺、シュナイダーのシュートを」
 そう、ファイヤーショットを。
「やったー、止めたんだ! ほんとに、俺…」
 ガッツポーズが出る。選手たちが駆け寄ろうとするのが見えた。
「…まさか、あいついつのまにそれほどの進化を?」
 そしてシュナイダーの顔の動揺と。
「森崎! やった、やったね!」
 一番に翼が飛びついた。
 誰もが歓喜し、祝福している。でも一番驚いているのは俺だ。
「やったよ、みんな。俺、止めたんだー!」
 口から、思わず叫び声が出る。
「森崎、森崎。すごいよ!」
「うん、翼。俺やるよ。勝とう、世界一へ!」
 歓声は続く。何よりも胸の中で沸き立つ。
「ジノ、あの特訓のおかげで、俺――」
 スタンドで、ジノはそんな森崎を満足げに見守っていた。何度もうなづきながら。
「行こう、試合はまだこれからだ。ゴールは任せたよ、森崎!」
「ああ」
 広がるフィールドが目の前に。夜空に輝く無数の光。
 森崎は、そこに立っていた。



                                  END


                ◆

 シナリオの通り書きましたが、あくまでノベライズなのでかなり変えてあります。まず台詞はほぼ別モノで場面も一部再編成しています。
たとえば冒頭の翼のシュートは普通のシュートで森崎はあっさり止めてます。イタリアの練習場面もカットしてあります。ジノとニューヒーローの一人称も僕に変えたし、ジノはイタリア語式にニウと呼んでるし。
何よりラストシーン、アナウンサーの失礼な実況、若林と若島津の賞賛の言葉は森崎には聞こえていないのでカットしました。あんなこと口に出すかな、とも思うし。ムーブが限られてるのでゲームではみんな一様に冷静ですが、そこは動きを足して演出してあります。
何よりゲームのほうが一目瞭然、それを見ていただければいいわけですが、YouTubeで何人かが抽出動画を出してらっしゃるので、お持ちでない方はそちらをどうぞ。森崎のしょぼくれポーズがカワイイです。
なおこれで勝つかどうかはプレイヤーの腕次第です。



 ここからは蛇足。ついでにゲームの話を。
ゲームに出てくるキーパーのうち主要キーパーはおのおの自分のシュートセーブのムーブを各5種類持っています。これをシュートに合わせたりもろもろのケースによって使い分けるわけですね。
で、たいていはカッコいいセーブのムーブで見せ場なわけですが、森崎だけ5つのうち3つが必死に取って取れたらニコッ、なんです。つまり、取れないと思ったけど取れちゃった、なんですね。他の人は笑うとしても「どうだ」ニヤリ、なのに。若林なんて5つともドヤ顔なんですよ!ジノはこれが理想の取り方だ、という教科書の見本みたいなムーブだし。
それで思ったのが主要キーパー以外のモブキーパーのムーブ。「取れなーい」「決まったー」などの点を取られるムーブは数種類あるのにとめられたムーブは一つきり「ニコッ」なんです。(たぶん)
これがねー、森崎くんのに似てて。ムーブは別だけど笑い方が。つまり取れないのが前提(デフォ)だけどそのわりにちゃんと取る、って位置なのかなーと。
もう一つ。このゲームは原則パワーが多いか少ないかの勝負で。キーパーだとパワーが多い時なら止めて少なければ点が決まる、という感じなんです。つまり同じ人の同じシュートでもキーパーのパワーの残り次第で決まるか止められるかが違うと。
フィールドプレーヤーだとパワーがない時はシュートも打てないしパスもタックルもできない、と。つまりガッツですね。ケガしてる翼とか制限時間越えた三杉とか。
で、キーパーの能力値は個人ごとに違って森崎は若林や若島津より低いんですが、このパワーに関して特殊能力を持ってまして。つまり彼だけがパワーゼロの時でも止められるんです。なんですかねー、この特別扱い。パワーがない時も森崎には「頑張り」パワーがあると言いたいのかな?
だから今回みたいなチャレンジが用意されてるのは嬉しいんですが、通常でもタイガーショットやイーグルショットやファイヤーショットさえ連続で止めるのを何度も目撃しました、ええ。だから今回のゲームで森崎は強くなってる、て声をよく聞きます。
彼は弱いことを期待されているキーパーだけれども実際には弱くない、むしろ強いキーパーだと。もっと言えば典型的な「打たれ強い」キーパーだと、このチャレンジを通じて言いたいんです。
若林なら押さえて当然、だから点とられたらひどくガッカリする。あっさり決められた時の絶望感ったら。でも森崎はその逆。また取れないんだろうな、からのへっちゃらセーブ。カタルシスはどちらが上か、ですね。
さっき言ったキーパーの5種のセーブムーブ。5つ目が残りパワーと相談して使う各自の最高値セーブつまり必殺技なんですが、森崎のは例の「体のどこでもいいから当たってくれ!→肩に当たる→ボール押さえる」なんです。最高にカッコ悪い捨て身っぷりが最高にカッコいいキーパー。それが森崎。これがいいんです。
なおジノの必殺技は当然「黄金の右腕」。本当に右腕が気合いと共に黄金色に輝くんです。に、人間じゃねえ!
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